エンプラの基礎知識(1)

2017年 エンプラ市場の展望とグローバル戦略の詳細を見る


■1.エンプラの位置付け
エンジニアリング・プラスチック(エンプラ)とは、耐熱性が100以上あり、強度が49.0MPa以上、曲げ弾性率が2.4GPa以上あるプラスチックのこと。耐熱性がさらに高い150以上の高温で長期使用可能なものを、スーパーエンプラという。広義には、以下の2つに大別される。

熱可塑性エンプラ(加熱すると流動し、成形が可能となる)
例:次項参照
・熱硬化性エンプラ(加熱すると硬化する)
例:フェノール、ユリア、メラミン、アルキッド、不飽和ポリエステル、エポキシ、ジアリルフタレート、シリコーン、ポリウレタン等
■2.熱可塑性エンプラにおける結晶性樹脂と非晶性樹脂の比較
各種プラスチックは、その結晶構造の有無により、結晶性樹脂と非晶性樹脂に分けられる。
結晶性樹脂の例:
エンプラ ポリアミド(PA)ポリアセタール(POM)ポリブチレンテレフタレート(PBT)ポリエチレンテレフタレート(PET)、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)>
スーパー
エンプラ
ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)フッ素樹脂、ポリエーテルニトリル(PEN)
非晶性樹脂の例:
エンプラ ポリカーボネート(PC)変性ポリフェニレンエーテル(mPPE)
スーパー
エンプラ
ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリアリレート(PAR)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、熱可塑性ポリイミド(PI)
概略的には、下記のように特徴づけられる。ただし、多くの特性は強化繊維やその他の充填剤を配合することにより改善されるため、実際には各種樹脂におけるグレードごとに特徴が違う。どの程度違ってくるかは、各メーカーのカタログ等を参照願います。

結晶性樹脂:

不透明、耐熱性高い、耐溶剤性に優れる、流れ良好、薄肉成形に適する、耐摩擦摩耗性・摺動性良好、高剛性、高硬度、もろい、割れやすい、そりやすい、収縮率大きい

非晶性樹脂:

透明、耐溶剤性劣る、調色容易、流れ悪い、摩耗比較的大きい、摺動性やや劣る、柔軟・強靭、割れにくい、そり少ない、収縮率小さい
■3.各種熱可塑性エンプラの一般的特徴
◇結晶性エンプラ:
  1. シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)
    メタロセン触媒を用いた最新のエンプラ。低周波から高周波まで電気特性(誘電特性)が極めて優れている。耐熱性(荷重たわみ温度250/GF30%)、耐薬品性、耐加水分解性、寸法安定性、メッキ性に優れる。エンプラとしては極めて低比重。難燃グレードあり。
  2. ポリアミド(PA)
    ナイロンともいう。化学構造の違いにより各種ある。耐衝撃性に特に優れている。耐摩擦・摩耗性、耐薬品性(強酸、フェノールを除く)、耐油性、ガスバリヤ性に優れる。化学構造上、吸水性が高いため、剛性低下、寸法変化に注意が必要。ただし、最近ではPPEとのアロイによる改良や、充填材による低吸水化(芳香族ナイロン)などの開発動向がある。
  3. ポリアセタール(POM)
    耐疲労性に極めて優れている。耐摩擦・摩耗性、低騒音性、耐薬品性、耐クリープ性、寸法安定性に優れるとてもバランスのよい樹脂。吸水性は少ない。ただし、小型成形品ではあまり問題とならないが、肉厚成形品ではひけが目立ちやすく、大型成形品では変形が発生しやすい。分子中に酸素を多く含むため、難燃性付与は難しい。元来、耐候性に劣るが、最近は紫外線安定剤や顔料の選定による耐候性の向上されたグレードが開発されている。
  4. ポリブチレンテレフタレート(PBT)
    強靭、高剛性、耐熱性、耐熱老化性、電気特性、耐候性、耐薬品性、寸法安定性、成形性に優れる。分子中にエステル結合を持つため、成形前に予備乾燥しないと加水分解を起こし物性が低下する。難燃化は容易だが、現状、臭素系難燃剤が用いられる場合が多く、環境への負荷低減の検討が期待される。最近は、金属インサート成形品の耐ヒートサイクル性を高めたり、低そり化、難燃PBTの低ガス化を改良したグレード等が開発されている。
  5. ポリエチレンテレフタレート(PET)
    耐熱性、耐薬品性、電気特性、耐候性に優れる。分子中にエステル結合を持つため、成形前に予備乾燥しないと加水分解を起こし物性が低下する。金型温度の低温化、溶融熱安定性に優れたものが期待されている。
◇非晶性エンプラ
  1. ポリカーボネート(PC)
    透明性樹脂。低成形収縮率、吸水率が小さく寸法安定性良好。耐衝撃性、耐クリープ性、電気特性も非常に優れている。耐薬品性に劣り、ストレスクラックに注意が必要。分子中にエステル結合を持つため、成形前に予備乾燥しないと加水分解を起こし物性が低下する。最近、ダイオキシン発生の懸念から有機ハロゲン系難燃剤を使用すると、ドイツのエコラベル等で認可が受けられなくなった。このため、ノンハロゲン系難燃処方が検討されており、すでにリン系難燃グレードやシリコン系難燃グレードが開発されている。また、ABSのノンハロゲン系による難燃化が困難なことから、PC/ABSやPC/HIPS等の難燃アロイグレードによるABSの代替が始まっている。
  2. 変性ポリフェニレンエーテル(mPPE)
    剛性、耐衝撃性、耐疲労性が広い温度範囲で安定している。低成形収縮率、寸法安定性に優れている。低比重、低吸水率、耐熱水性に優れる。耐薬品性は酸、アルカリに侵されないが、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素には侵される。難燃グレードの成形時にでるジュースが課題であったが、最近は高分子量難燃剤により改善されてきている。元来耐候性に劣る(黄変)が、最近ABSに近い耐光性の難燃グレードが開発されている。一般にリン系難燃剤を使用しており難燃規格ULHBからV-0まで可能なため、ダイオキシン発生等の問題は懸念されない。
◇結晶性スーパーエンプラ
  1. ポリフェニレンサルファイド(PPS)
    非常に耐熱性が高い(荷重たわみ温度260以上)。機械的強度、剛性、難燃性、電気特性、寸法安定性、耐クリープ性に優れる。耐薬品性は特に優れ、熱濃硝酸の他はほとんどの酸、アルカリ、有機溶剤に侵されない。耐熱水性にも優れる。充填材の特性が現れやすいことから、摺動性、接着性、導電性、超精密成形性、高熱伝導性、封止性等の性能を付与したコンパウンドが多数展開されている。スーパーエンプラの中では特にコストパフォーマンスに優れていることから、着実に使用量が増加している。靱性が低い、バリが発生しやすい、分子構造にイオウを含むため金型の腐食・摩耗が大きいという課題があるが、最近では改良グレードが開発されている。
  2. フッ素樹脂
    分子中にフッ素を含有する樹脂(PTFE,PFA,FEP,E/TFE,PVDF等)の総称。耐熱性、耐寒性、耐薬品性、耐熱水性、耐候性が極めて優れている。非粘着性、低摩擦性、高周波特性に優れている。
  3. ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)
    熱可塑性樹脂中、最高レベルの耐熱性(連続使用温度240、荷重たわみ温度300/GF30%)。難燃性、低不純物性、耐熱水性、耐放射線性、耐薬品性、耐疲労性も非常に良好。成形温度は高くする必要がある。高価。
  4. 液晶ポリマー(LCP)
    溶融時に液晶性を示す樹脂。流動性が極めて良好。剛性、強度、成形性、吸水率が低く寸法安定性に優れる。バリやヒケが比較的少ない。耐熱レベルによりタイプ1、2、3に分類される。現在市場で最も使用されているのはタイプ2で、荷重たわみ温度が220から280のもの。また、分子構造により全芳香族系と半芳香族系に分かれる。全芳香族系は高耐熱性、半芳香族系は薄肉流動性に優れるという特徴がある。異方性があること、接着性が悪いこと、ウェルド強度が低いことが課題。また、分子中にエステル結合を持つため、熱水やスチームには注意を要する。一般に高温で金属に付着しやすい性質があることや、300以上でも安定なパージ剤が市販されていないことから、パージ方法にも注意が必要。
  5. ポリエーテルニトリル(PEN)
    熱可塑性樹脂中、最高レベルの耐熱性(連続使用温度230、荷重たわみ温度330/GF30%)。強度は汎用エンプラの約2倍、難燃性、低不純物性、耐熱水性、耐薬品性、耐疲労性、耐クリープ性、摺動性も非常に良好。成形は通常のエンプラ対応射出成形機を利用できる。高価。
◇非晶性スーパーエンプラ
  1. ポリサルホン(PSF)
    こはく色透明の樹脂。靱性、耐熱性、耐加水分解性に優れ、高温でも酸、アルカリ、熱水に対し安定だが、有機溶剤には注意が必要。耐クリープ性、低温特性、電気特性、難燃性、寸法安定性にも優れる。吸湿によって物性低下はしないが、気泡やシルバーの原因となるため、成形する前には十分な乾燥が必要。
  2. ポリエーテルサルホン(PES)
    こはく色透明の樹脂。耐熱性、耐加水分解性、難燃性、耐クリープ性に優れている。寸法安定性も良好。耐薬品性は良好で耐ストレスクラック性に優れるが、有機溶剤には注意が必要。
  3. ポリアリレート(PAR)
    透明性樹脂。現在、アロイ・コンポジット系が多い。PAR/PC、PAR/PET、PAR/PA、PAR/フッ素樹脂等のアロイが上市されている。耐熱性(Tg:195)、紫外線バリアー性、耐衝撃性、表面硬度、耐クリープ性、回復曲げ弾性に特徴がある。分子中にエステル結合を持つため、熱水やスチームには注意を要する。有機溶剤にも注意が必要。
  4. ポリアミドイミド(PAI)
    耐熱性(連続使用温度250)、耐衝撃性、耐疲労性、難燃性、耐摩擦摩耗性、耐薬品性、耐ストレスクラック性に優れる。電気特性も良好。
  5. ポリエーテルイミド(PEI)
    こはく色透明の樹脂。耐熱性、機械特性、難燃性、電気特性に優れる。有機溶剤には注意が必要。
  6. 熱可塑性ポリイミド(PI)
    有機高分子中、最高レベルの耐熱性(連続使用温度250以上)。難燃性、機械的強度、耐摩耗性、耐クリープ性、耐放射線性、寸法安定性に優れる。
◇本資料に掲載したデータ及び記述は、製品の設計の参考です。
◇本資料に記載の内容は信頼できるテストと情報に基づいていますが、データ及び記述を絶対的なものと見なさないでください。
◇本樹脂を製品に適用する場合は、その設計の妥当性を必ず別途確認してください。
◇本資料は記載内容の適用結果を保証するものではありません。
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