素材関連産業におけるメディカル・ライフサイエンス市場 市場動向1

マーケット情報TOP
国内の化学品・樹脂素材関連企業は、エレクトロニクス分野(特に液晶テレビ向け材料など)を得意事業としている企業は少なくないが、近年は海外企業との競争が激化している。特にコスト競争が激しさを増す一方であり、収益性が低下している企業も見受けられる。

これまでの成長ドライブであったエレクトロニクス分野の低迷に加え、基礎石化事業の採算悪化など、素材関連企業を取り巻く環境は厳しさを増している。そのため、既存のビジネスモデルを捨て、新たな収益源を確保する必要性に迫られている。

このような背景から、多くの素材関連企業において、高齢化が進む日本国内でも安定的に成長が予測され、付加価値を高められる領域として「ヘルスケア」や「ライフサイエンス」をキーワードに掲げるケースが増加している。

そこで、今回は素材関連企業における「ヘルスケア・ライフサイエンス事業」の方向性を俯瞰してみた。

■素材関連企業におけるライフサイエンス事業の概要
化学メーカーは高度な高分子合成技術や微粒子技術、樹脂加工技術を有しており、これらの技術を応用することで、メディカル・ライフサイエンス領域における事業拡大が十分可能である。しかし、メディカル・ライフサイエンス領域は欧米系の化学メーカーあるいはライフサイエンス専業メーカーが先行して事業展開しており、日系化学メーカーは遅れている分野が多い。

また化学メーカーにとって新事業領域でもあるため、知見・情報が少なく、思うように事業展開できない領域でもある。これは言い換えると、本格的に日系化学メーカーが注力すれば、事業拡大の「伸びしろ」がある領域と言える。

国内素材関連企業におけるライフサイエンス事業構成
事業分野集計企業数総売上高
(2013年度)
構成比(%)主要参入企業
医薬品20社11,527億円51.2三菱ケミカルHD、住友化学、他
診断・検査・研究21社5,718億円25.4富士フイルムHD、コニカミノルタ、他
診療・治療12社2,631億円11.7旭化成、帝人他
バイオ医薬15社1,197億円5.3三菱ケミカルHD、富士フイルムHD、東ソー、他
ヘルスケア5社71億円0.3東レ、日油他
再生医療5社15億円0.1東洋紡、富士フイルムHD、他
その他16社1,358億円6.0花王、三菱ケミカルHD、富士フイルム、他
合計22,517億円100.0 
ヘルスケア・ライフサイエンス事業分野別に抽出した32社を集計
(連結ベース)
富士キメラ総研調べ

医薬品では、最終製品(医薬品事業)を有する三菱ケミカルHDや住友化学の位置付けが高い。両社はグループに大手製薬会社を有し、製薬から中間体や包装原料など幅広く事業展開をしている。財閥系化学メーカーは総合石化企業として高いファインケミカル・合成技術があるため、技術的な優位性がある。

診断・検査・研究は、各種化学物質などの分析や解析などは化学メーカーが得意とする領域である。そのため、臨床検査の検査薬・診断薬、機器、関連部材を手掛ける素材メーカーは多い。また、イメージング技術を応用した機器類では富士フイルムHDとコニカミノルタの事業規模が大きく、2強市場となっている。

診療・治療では、血液ろ過や人工透析の各種膜やフィルター、歯科材料、医療器材が対象となる。大手繊維系企業が水処理膜など各種膜・フィルター技術を有しており、当該分野でも事業展開を進めている。旭化成メディカルの「プラノバ」が世界シェアトップのウィルス除去フィルターとしてイオ医薬製造プロセス用に展開するなどの事業展開を進めている。

膜・フィルター技術は材料と技術を持っている企業は世界でも限られており、海外競合ではメルクやポールなどが大手メーカーとして位置付けられる。

歯科材料ではクラレが国内大手メーカーに位置している。同社はノリタケカンパニーと合弁会社クラレノリタケデンタルを設立し、当該分野へ注力している。

三井化学は、Heraeusの事業を買収し、当該分野へ注力している。事業部門別の実績は不詳のため抽出していないが、注力企業の一つに挙げられる。

医療器材ではカテーテルなどは素材技術が生かされる領域である。例えばゴム系・ポリマー系の材料では大手合成ゴムメーカーのJSRや日本ゼオンなどが参入している。その他東レや東洋紡、ユニチカなど繊維系素材メーカーの参入も目立っている。

バイオ医薬品では、微粒子×ポリマー技術を応用出来、高付加価値領域であるプロセス用部材に新規参入が目立つものの、バイオ医薬品(最終製品)の開発・生産はハードルが高く、製薬メーカーであっても難しい領域である。

ヘルスケアは、次世代医療として医療の個別化が挙げられる。まだ事業として成熟してはいないが、既存の検査技術を応用することで、個別に検査することが可能となっている。素材メーカーはヘルスケア領域において、BtoC事業へと事業領域を拡大する可能性もある。

再生医療は先端医療分野であり、本格的な実用段階にはない。現在は皮膚および軟骨がJ-TECによって実用化されている。ただし、関連部材を含め市場規模は小さく、研究開発用向けを中心に各社事業を展開している。そのため参入数も少なく、今回の集計では東洋紡のみとなっている(富士フイルムはJ-TECが連結前であるため除外した)。

本来再生医療は、患者の細胞から目的の臓器や皮膚を再生し、再度患者へ移植することである。広義の意味で、神経を再生する関連部材として東洋紡の神経再生チューブを取り上げている。

次回は既存技術のメディカル・ライフサイエンス分野への応用展開状況を事例で取り上げていく。

参考文献:「2015年 素材関連企業の次世代ヘルスケア・ライフサイエンス事業戦略分析」
(2015年02月25日:富士キメラ総研)

エンプラ関連専門サイト EnplaNet Books


戻る
エンプラ関連情報サイト エンプラネット トップページ